増加する一方の空き家。その適切な管理や利活用の促進策などを定めた「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行され、今月で丸2年となる。全国の自治体で実態調査や基本計画の策定などが進む中、東京都も区市町村の取り組みを促す施策を先駆的に実施している。
■相続、売却、賃貸などの相談 ワンストップで対応、解決へ
「空き家の相続や管理についてどこに相談すればいいのか」「どのくらい費用がかかるのか知りたい」――。こうした空き家に関するさまざまな相談事をワンストップで受け付け、解決につなげていくのが、東京都の「相続空家等の利活用円滑化モデル事業」だ。
2016年12月にスタートした同事業は、空き家を相続した人などを対象とする。売却、賃貸、管理などについて、都が公募で選定した三つの事業者【図下部参照】が都内各地で無料相談に応じ、弁護士や不動産業者などの協力も得ながら活用方法を提示する。
空き家の相続が始まりとなる場合が多いので、「親族間で権利関係をはっきりさせたい」といった相談にも対応している。
一方、空き家を活用する上で耐震診断などが必要となれば、相談者はその費用の一部の助成を受けることも可能だ。
モデル事業の開始以来、約4カ月間で90件ほどの相談があった。都は今年度末までの期間内に、より多くの事例を収集し、取りまとめた上で、18年度以降に都民や区市町村に周知していく。
こうした都の施策について、都住宅政策推進部の渡辺美緒・住宅施策専門課長は「民間事業者を選定し、ワンストップで相談に応じて具体的な解決につなげ、事例の収集まで行う事業は、全国でもあまり例がないのでは」と、その独自性を強調している。
■実態調査や計画策定など区市町村の取り組み支援
空き家対策特措法は、区市町村の施策に法的根拠を与えたものだ。そこで、都は都内の自治体の取り組みを後押しする「空き家利活用等区市町村支援事業」を15年度から実施している。
事業の内容は、区市町村が行う①空き家の実態調査②対策基本計画の作成③空き家の改修④老朽空き家の解体や跡地の更地化などの除却⑤専門家を活用した空き家に関する相談体制の整備――に対して、都が費用の一部を補助するものだ。
特に、空き家改修の対象となるケースは二つある。一つは、子育て世帯など住宅確保に配慮が必要な人に空き家を貸し出すため、バリアフリー化や省エネ化といった改修を行う場合。もう一つは、空き家を地域の活性化につながる施設として活用するために改修する場合だ。高齢者向けのサロンやグループホームなどが想定されている。
都の支援事業を使う自治体も増えてきた。例えば、実態調査は21自治体、対策計画の作成は11自治体に上り、このうち杉並区、練馬区、町田市など5自治体が既に計画を策定済みだ。また、大田区は空き家の改修、文京区と墨田区は老朽空き家の除却、品川区、大田区、世田谷区、町田市など6自治体は相談体制の整備を進めている。
また、区市町村が空き家対策に取り組むには、国や関係団体からの情報の収集や、他の自治体との共有も重要になる。そのため、都は区市町村と「空き家対策連絡協議会」を結成し、今月25日にも初会合を開催する予定だ。
■「総合対策の作成を」 都議会公明党
国が5年ごとに行う住宅・土地統計調査によると、最新の13年時点における東京都の空き家数は約82万戸に上る。空き家率は11%程度だ。
空き家のうち約60万戸は賃貸用が占める。一方、長期不在・取り壊し予定の空き家も約15万戸あり、老朽化による倒壊の恐れや衛生上の問題、放火や不法侵入の危険など地域の生活環境に悪影響を与えることが懸念されている。
こうした事情を背景に、都議会公明党は定例会の代表質問などで空き家対策の強化を訴えるなど、都の事業を積極的に推進してきた。
16年12月に都に提出した今年度の予算要望でも空き家対策の推進を掲げ、「空き家活用の総合対策を作成し、必要に応じて推進条例を制定すること」などを要請。需要が増加する宿泊施設や福祉施設としての活用についても取り組みを求めている。
公明新聞:2017年5月23日付