東京都は2015年度から、独自の助成金を設けるなど、パートや契約社員などで働く非正規労働者の正社員化に力を入れている。17年度までに1万5000人の正社員化が目標で、これまでに約7300人(16年10月末)が正社員への転換を果たした。前進する都の非正規雇用対策の現状と、都議会公明党の取り組みを紹介する。

現在、都が非正規雇用対策の柱に据えるのが「都正規雇用転換促進助成金」だ。これは非正規労働者の正社員化を支援する国の「キャリアアップ助成金」に上乗せして事業主に支給する。

例えば、都内の中小企業が国と都の助成金を活用して契約社員を正社員にした場合、対象者1人当たりキャリアアップ助成金の60万円に加えて、都の同助成金50万円を支給。さらに、従業員の退職金を確保する中小企業退職金共済制度にも加入した事業主には、都が独自に10万円を加算している。

マッサージ院の店内で従業員と作業する藤原代表取締役(左)=都内

「都の制度は使いやすくて本当に助かった。安定した人材確保を後押ししてくれている」。こう語るのは、妊産婦のための鍼灸マッサージ院「天使のたまご」を営む藤原亜季代表取締役だ。中央区銀座を本社に都内外に5店舗を展開する同社は、17人の従業員すべてが女性。それだけに独立をめざす従業員に加えて、結婚や妊娠・出産などによる離職率の高さが課題だった。そうした中、都の助成金の存在を知り、人材の安定確保へ正社員の採用に踏み出した。

1年間の契約社員を経て、正社員になった従業員のAさんは「正社員となり、安心して仕事が続けられる。やりがいを感じている」と笑顔で語った。

都産業労働局によると、16年10月末までに7269人の正社員化が実現している。ITシステム開発などに取り組む、ある企業は、都と国の助成金を活用し、約2年間で90人以上を正社員に転換したという。同若年者就業推進担当課の小澤力課長は「15、16年度における制度の利用状況に手応えを感じている。今後も非正規で働く人への支援を着実に進めていく」と語る。

このほか、都はバブル後の不況期に社会人となった「就職氷河期」世代(35~44歳)のうち、非正規雇用の経験が長い人を対象に「正社員就職サポート事業」など、合計で六つの施策を実施している。

都議会公明党 施策の充実訴え

15年に厚生労働省が発表した調査では、国内の労働者のうち、非正規労働者が4割を占める。この中には正社員として働くことを希望しながら、非正規社員として働かざるを得ない「不本意非正規労働者」も少なくない。東京都には、こうした労働者が約17万人いるとされる。

このため、都議会公明党は非正規労働者の就労支援について、予算要望や議会質問などを通じて都にさまざまな提案を行ってきた。中でも、15年2月の都議会定例会で代表質問に立った中島よしお都議(都議選予定候補=北多摩3区)は、「資格取得や職業訓練など、キャリアアップによる正社員化を促す都独自の支援策を講ずるべきだ」と強く主張。

これに対し、都産業労働局から「国の助成金に上乗せする新たな助成制度を創設する」との答弁を引き出し、都正規雇用転換促進助成金を実現した。

さらに都は昨年12月、22年までに不本意ながら非正規で働く労働者を8万3000人にまで減らす新たな実行プランを発表した。

◎キャリアアップ助成金も拡充

一方、厚労省は20年度までに非正規労働者と正社員の賃金格差の縮小などを図る「正社員転換・待遇改善実現プラン」を推進中だ。国の支援策であるキャリアアップ助成金は公明党の推進で始まった制度。17年度政府予算案では非正規の処遇改善に向けて、同助成金のさらなる拡充策が盛り込まれている。

公明新聞:2017年3月3日付