多様な声を聞く寛容さ 幅広い合意づくりに期待


東京都議会公明党が他党に先駆けて提唱した「身を切る改革」を具体化する条例が、第1回定例会初日の22日の本会議で採決され、全会一致で可決、成立した。
条例成立の意義や公明党が果たした役割について、政治資金の問題に詳しい河村和徳・東北大学大学院准教授に聞いた。

―条例制定をどう見るか。

今の都政は、「小池百合子知事対都議会自民党」という対立ばかりがマスコミに取り上げられ、そのためにどうも物事が前に進まないのではないかという印象を、多くの人に持たれていると思う。

こうした中、都議会公明党がこの単純化された対立構図に巻き込まれることなく、「身を切る改革」の実現へ、都議会の総意として条例を成立させるリード役を務めたことを高く評価したい。

―公明党案と同じ内容の条例を、どう評価しているか。

例えば、政務活動費の減額と全面公開は、大きな成果と言える。なぜなら、政務活動費をめぐる不正が各地で相次いでおり、改革は全国的な機運だったからだ。全国への波及効果にも期待したい。

都議会定例会の開会直前、他会派から次々と改革案が出された。もし、「実は自分たちの提案の方が公明党案より議員報酬の削減額が大きかった」などと得意になっているのなら、都民感覚とズレている。都民が注視しているのは、金額の多い、少ないではなく、改革への覚悟や姿勢であり、それが自発的なのか、受け身なのかだ。

改革の先頭を走った公明党が、自民党との見解の相違から袂を分かち、小池知事にすり寄っていったように映ったのはもったいなかったし、公明党の本意ではなかったはずだ。

―都政で求められる公明党の役割は。

都政改革を進めていく上でのポイントは「共感」と「寛容」だ。

例えば、2020年東京五輪・パラリンピックの競技会場の選定や豊洲市場への移転にしても、都民は“置いてけぼりにされた”と感じている。一方、身近な暮らしの問題である保育所の待機児童や介護の受け皿不足への対応は、あまり進んでいないと思っている。

従って多くの都民が共感してくれる方向に改革を進めていかないといけないし、同時に政治を行う側は多様な意見、特に女性の声を聞く寛容さを持ち合わせていないといけない。

小池知事自身は、多様な声を聞くことを強調しているが、7月の都議選で知事が実質的に率いる地域政党から出馬する候補に、こうした姿勢がある保証はない。選挙で勝てる即戦力を集めようとすると、どうしても候補の質が似通ってくるし、改革を強く打ち出せば打ち出すほど、多様な声への配慮が失われてしまうからだ。

こう考えると、長年にわたって地域に根差し、日頃から多様な声に耳を傾けてきた公明党こそ、改革実現のキーマンだ。「身を切る改革」をやり遂げた公明党が、これからどう動くのか。都民は次の一手に注目している。政策を実現するため、幅広い合意をつくり出す公明党の知恵と行動力に期待したい。

 

【条例のポイント】

●議員報酬を20%削減。今年4月から確実に実施するため、1年間の特例に

●政務活動費を議員1人当たり10万円減額し、収支報告書などをネット公開

●本会議などに出席するたびに旅費として定額支給されている費用弁償を廃止

「身を切る改革」条例のポイントは大きく3つ。

  1. 議員報酬の20%削減。新年度が始まる4月から確実に実施できるよう、1年間の特例とした。公明党は20%削減の恒久化をめざし、引き続き取り組む。
  2. 議員1人当たり月額60万円の政務活動費を10万円減額し50万円にするとともに、収支報告書と領収書などの写しをインターネット上で全面公開する。
  3. 本会議や委員会などに出席するたびに旅費として定額支給されている費用弁償の廃止だ。ただし、島部在住の議員のみ交通費と宿泊費の実費を支給する。

このほか、永年議員に対する表彰制度も改正。具体的には、在職25年と30年の議員への記念章と記念品の授与を廃止し、在職30年の議員の肖像画を議事堂内に掲示することをやめる。

都議会公明党は昨年11月、都政の信頼回復に向け、「身を切る改革」の具体案を公表した。都議会第2会派の公明党が、いち早く具体的な数字を示して改革に乗り出したことは、世間の注目を集めた。

当初、公明党案に対する他会派の反発も大きかったが、公明党が今月22日からの第1回定例会での成立をめざしてブレずに訴え抜いた結果、他会派の賛同を得て、公明党案と同じ内容の条例を全会一致で可決、成立させることができた。

公明新聞:2017年2月25日付