記者会見する東京都の小池知事(20日午後、都庁)

築地跡地売却せず 5年後めどに再開発

【市場移転基本方針のポイント】

◎築地市場を豊洲市場に移転
◎築地市場跡地は当面、2020年東京五輪の輸送拠点として活用
◎同跡地に整備する都道「環状2号」は五輪前に開通させる
◎築地市場を5年後をめどに「食のテーマパーク」機能を持つ新拠点として再開発
◎豊洲市場は冷凍・冷蔵機能を強化し、総合物流拠点にする

東京都の築地市場(中央区)から豊洲市場(江東区)への移転問題をめぐり、小池百合子知事は20日、都庁で臨時に記者会見し、市場を豊洲に移す意向を明らかにした。移転時期は明言しなかった。築地の跡地は売却せず、5年後をめどに再開発するが、新たな中央卸売市場としての機能は豊洲市場に持たせるとした。また、築地は再開発前に開かれる2020年東京五輪・パラリンピックでは、輸送拠点として活用する。

こうした基本方針に基づき、都は具体化に向けた作業に入る。市場問題は、小池氏が知事就任直後の昨年8月に延期を表明してから約10カ月を経て、移転へ動きだすことになる。

会見で、小池氏は豊洲について「新たな中央卸売市場としての機能を優先させ、物流の機能をさらに強めていく。豊洲にいったん移ってその後、売却という話ではない」と表明。築地に関しては、「市場としての機能が確保できるための方策を見いだしていきたい」と語った。

具体的には、土壌汚染が残る豊洲で追加の安全対策を実施。その上で冷凍・冷蔵や加工といった機能を強化し、豊洲を「ITを活用した総合物流拠点」とする。

五輪時に関係者らを運ぶバスなどの輸送拠点とする築地には、晴海地区に建設する選手村と都心を結ぶ都道「環状2号」を、大会に間に合うよう開通させる。五輪後は培ったブランド力を生かし、「食のテーマパーク」として再開発。築地への復帰を希望する業者を受け入れる。

豊洲市場では昨年9月、主要建物下で土壌汚染対策の盛り土が行われず、地下空間が設けられていたことが発覚。同10月には地下空間の大気から国の指針の最大7倍に上る有害物質の水銀が、今年3月には地下水から環境基準の同100倍のベンゼンが検出されていた。

市場関係者ら安堵の声

東京都の小池百合子知事は20日、築地市場(中央区)を豊洲市場(江東区)に移すとともに、築地を再開発する方針を示した。昨年11月に豊洲に移転する予定だったが、小池氏が延期を表明。移転推進派の市場関係者からは「やっと答えが出た」と安堵の声が聞かれた。

移転推進派の都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長は「知事の発言は比較的バランスの取れたものだった」と評価。その上で「大づかみの方針が示されただけで中身はこれから。都と話を詰め、理想的な市場に近づけたい」と意欲をみせた。

5年後に築地を再開発し、復帰を希望する業者を受け入れる方向性には「市場は卸業者や仲卸業者などが一堂に会するもの。二つの市場は成り立たない」(伊藤会長)、「築地と豊洲の並立はあり得ないと考えている」(移転慎重派の東京魚市場卸協同組合の早山豊理事長)と否定的な意見が出た。

公明提案 受け入れ歓迎

☆山口代表 都議選で民意示す機会

公明党の山口那津男代表は20日夕、東京都の小池百合子知事が市場移転問題で、豊洲に市場を移す意向を表明したことについて、国会内で記者団に対し、大要次のような見解を述べた。

一、都議会公明党は小池知事に対し、都議選前に豊洲移転の方向性を明確にすべきだと要請していた。その提案が受け入れられたものであり、都議選で都民の民意が示される機会をつくったことを歓迎したい。

一、(5年後をめどに築地を再開発する方針について)新たな提案であるので、今後、都民の意見も聞きながら検討すべきだ。

☆東村幹事長「知事の判断を評価」

都議会公明党の東村くにひろ幹事長(都議選予定候補=八王子市)は20日、小池百合子知事の記者会見を受け、八王子市内で記者団に対し、大要次のように述べた。

一、豊洲市場の移転判断について、都議選前にすべきであると一貫して申し上げてきた。知事の判断を評価する。安全対策を施した上で豊洲市場に移転をする方向性を示されたことも高く評価したい。

一、築地市場の再開発について、民間活力を使って行うとしているが、今後、検討すべき課題がいくつかある。その一つは、(築地での仕事を)希望する仲卸業者は、一度、豊洲に移ってから築地に戻ることになる。これは、かなりの経済的な負担が生じる。都がどこまで支援をするのかという課題がある。

一、小池知事は会見で「豊洲には中央卸売市場としての機能を残す」と明言した。仮に、いくつかの業者が築地に戻り市場を形成する場合、その規模の問題や豊洲との整合性についてどうするのか。また、これまでは豊洲移転の場合、築地市場の売却益を豊洲整備のために発行した起債の返還などに充てる予定だったが、これも検討課題だ。築地の再開発についてはクリアすべき課題が多く、改選後の都議会で検討していく必要がある。

公明新聞:2017年6月21日付